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名前をつけてください

なにもないよ

2.21.2017


2月21日、天気は曇り時々雪。


就活。

もっと寝ているつもりがぱっちりと目が覚めてしまい、それから何度も寝ようと試みるも失敗。予定時刻の3時間前に起きる。


ラインを開くと懐かしい名前から連絡が来ていて少し嬉しかった。なんてありきたりな名前なんだと10年目にして思った。

そう言う意味では、珍しいという点で自分の名前も捨てたもんじゃないと思った。でも僕は自分の名前が嫌いだ。


お風呂に入って短い髪を乾かし、髭を剃った後またいつものコンビニでコーヒーを買った。

タバコを吸った。

就活前には吸わないでという忠告を思い出す。

これでしばらく吸えないのだなと覚悟した。

外はいくらお風呂上がりにしても寒すぎた。


コンビニから帰った後、鏡の前で「こんにちは。よろしくお願いします。」を自然に言うための練習をした。

何回やっても鏡に映る自分は不自然な笑顔のままだった。


尊敬語の練習もした。

関西弁にだけ開かれた未知なる尊敬語を封じる策は最早ないことが明らかになった。先輩は何があろうと就職しはるんですか?

今まで先輩を先輩とも思わずに接してきたことを後悔した。

だから僕は、うっかり間違えた時用にかわいらしく舌を出す練習をした。

恐ろしいほど気持ちが悪かった。


関西の企業なんだからこれくらい分かるでしょ?みたいな顔をすることも試みようとはしたけど、僕は関西人が嫌いなのでやめることにした。 

もし関西人が嫌いじゃなかったら僕はそれを平気でやっていたと思うので、今日初めて関西人が嫌いな自分に感謝した。

関西生まれ関西育ちは関西をアイデンティティにする派としない派に分かれる。


その後なんだかんだ今日話すことを箇条書きにしておいた。僕が予想するに、これは何の役にも立たないだろう。


近鉄に乗って、京都駅で友達に会った。終始ふざけながらうどんを食べる。

でも本当は親子丼が食べたかった。


そう言えば今日のお昼、大阪にてなんかの大爆発が起きたらしいけれど、僕はビールを飲みながらそれを冷ややかに見送った。学生が大きな建物から吹っ飛んだらしい。そういう日もある。

小さな積み重ねは大事なのだ。

反省点?ちょっとよく分からない。でもそうは言ってもちゃんと分かってる。

そういうことは案外多い。

小さくていい。小さくていいことを知らなければならない。

今日はそれでいい気がする。


まあでもあれだ、壮大な話なんて誰も信じないよな。

彼らにとって僕たちは単なる初対面の学生に過ぎないんだし。信じられないのかも。ネガティヴワードをひっくり返すやり方も、技術がない人はやらない方がいいね。

とりあえず大きなことを話さなきゃいけないと勘違いしていたかもしれない。


切り替えよう。

僕はハナから全て上手くやれるほど器用じゃないし。

人生は長い。直したい放題じゃないか。素晴らしい。


帰りの電車の車窓に映る眼は疲れて真っ赤だった。

4時半からよく頑張りました。

お疲れ様。 


帰りに友達に呼ばれて本日2回目の京都駅へ。

頭が疲れてしまって、京都に向かうはずがなぜか三ノ宮にたどり着く。それでも友達に会いたい気分だったから、再び大阪を経由して京都へ行く。


晩は京都駅のとあるフードコートで何人かとご飯を食べる。

丸亀製麺の天ぷらを全種類乗せたうどんを食べ、ローストビーフ丼大盛りを食べた。

天ぷらは誰が何をしてもうまい。僕はそんな天ぷらのような人になりたい。


帰り道、あまりちゃんと話したことのない後輩と二人で帰る。

案外居心地が良くて落ち着いた。

二人でいなきゃ分からないことってたくさんあるなと思った。

芯のある落ち着いた子だった。


久しぶりに何もしない夜を過ごそうと、いつものファミマで安いワインを買う。

コンビニのワイン評など当てにしない。僕が求めるのは値段だけ。一人のワインは、安くて度数が高ければなんでもいい。

もはや何でも一緒。


じゃあもう何もかもが一緒であれよと思う。

無職も金持ちも。ブラックもホワイトも。美人もコーヒーも。餃子もナスのおひたしも。ギターもドラムも。プラダもシマムラも。

幼稚園の優等生みたいな思想だね。つまらない世界観。


2月もあと少し。どんどんと何かが近づいてきて、どんどんといろんなものが失われていく。

そんなことを夕方の繁華街を闊歩する大学生たちを見て思った。


もう僕は、待合室から顔を強張らせて会場へ向かう人の姿を見たくない。

悲しくなる。

そんな余裕自分にはないのに、

ガンの陽性検査の結果を聞きにいく人みたいな顔だな

とか思った。

そして僕は、敗れ去った甲子園球児のように唇を噛み締めながら頭を下げて会場を後にする。

少し悔しくて、その時初めて、自分が意志を持って活動していることに気がついた。



2.20.2017


2月20日。天気は曇り。今にも雨が降りそうだったから傘をとる。どこかに忘れないように願う。


二度寝した後朝7時半に起きて、近くのコンビニでおにぎりとエナジードリンクを買う。思った以上に眠くない。

いつも働いているおばちゃんに会計をしてもらう。軽く会釈して、いつも通り会計のお礼を言う。

タバコを二本吸う。


タバコを吸っている途中、昨日のライブで

タバコは良くない、本当にやめた方がいい

と注意されたことを思い出す。

ご丁寧に面接前は吸うなと念を押された。

そんなことで落とす業界なら鼻から結果なんてどうでもいいと思ったけれど、あんな酷いものを通してくれた会社だから、結果云々よりも礼儀だけはしっかりしておきたいと思う。

面接前にタバコはなるべく吸わないでおこうと思った。

終わったら死ぬほど吸おう。

そして心配してくれた友人に少しだけ感謝した。

わざわざ僕に話をしてくれる人には感謝しないといけない。

それは常に示していたいし、大切なことだと思っている。以前よりずっと前から。


少し散歩をした後、頭が回り始めたと勝手に思い込んでwebテストを受ける。

速さを求められるといつもパニックになる。いつも通り焦る。

次の予定があったけれど、思った以上にwebテストが長くて遅刻することが確定した。

またいつも通り遅刻常習犯の烙印を押される。

でもそんな「いつも」はいつだって僕に安心感をくれる。

どっかの小説家のように僕はやれやれと言った。

テストはできなかった。


京阪電車に乗って出町柳へ向かった。

三条のスターバックスがある橋の下で人と会った。そこには何人かいた。僕の髪は短かった。

ここでの出来事は特になし。とある打ち合わせをした。


1時間打ち合わせをした後はみんなでカフェに入ってご飯を食べた。

その後更なる無駄話をするためにサイゼリアでワインを飲んだ。デカンタ。あれ、最早ワインじゃない。

でもちゃんと話すには多分薄いくらいが丁度いい。


友達が少しだけ面接の練習をしてくれた。

友達が心配してくれて少しだけ悲しくなった。それはいい意味で。

ちゃんと自分には友達がいるんだなぁなんてよくわからない感動を体験した。

今まで自分なりにあれこれ考えて、捨て身の形で友達と付き合ってきてよかったと思った。

友達に自分の真似をされた時、自分が思った以上に強い語調で話していることに驚いた。

こんな奴によく友達ができたものだ。


そういえば一年前に就活中の高校の同期がいろんなことに感動していて、僕はそれを嘲笑って見ていたけれど、なんだか今ならそれを笑わずに見ていられる気がする。

そういうこともあるのだと難しい顔をしてうなづける。


明日もまた友達が面接の練習をしてくれるらしい。

少し泣きそうになった。


帰ったら電話でまた別の友達と話す。

そしてすぐ寝る。

決めている。明日は伝えたいことを一つだけ伝える。

別に落ちることは問題ではない気がする。

言いたいことをちゃんと言ったらそれでいい。

少なくとも僕はそれで満足する。


人と会うのはいい。

当たり前のことに感動する。


当たり前のことに気づけた!

分かるよ、分かる。

絆、今の僕には分かるのだよ。


でもそれ、浅いです。



2.19.2017


2月19日、天気は快晴。とても寒い。僕にしては珍しく暖かな太陽の日差しに感謝する。


眠い。ひどく眠い。顔が強張る。イライラもする。ずっと何かに怒っているような気がする。だけど何も解決はしない。残るのは申し訳なさだけ。


体に鞭打って朝早くから大阪へ。

いつも疑問なんだけど、囲みこみ質問タイム、あれなんなんだろう。別に質問することって面接対策とか試験対策くらいしか思いつかないし、特段聞きたいこともないのだけど。

はっきり言ってさっきお偉いさん方が説明された通りだし、内定者の仰せの通りじゃないですか?こんなことを思うのも僕の態度が悪いことが原因なのだろうか?

僕がこのシステムを一番嫌う理由は、何か質問しなきゃいけないと焦って、ぎこちない動きをしながらトチ狂った質問をひたすらかます奴を見なきゃならないところだ。

なんかあれを見ていると本当に辛くなる。

必死なんだ。みんな。

周りのやつらはせめて奇怪な目で彼を見ないであげて欲しい。というか何名かは嘲笑ってるんだよな、あれ。

正直僕の目から見ると、通るわけでもない会社の就職後の話や業界の話を今の段階で質問してるあなた達の方がよっぽど意図が分かりかねる。

彼らのそういう態度は酷く醜いと思う。

でもそもそもの話をしだすと就職活動そのものがとても醜くくて切ないものだし、それでもやっていくしかないと思わないといけない。

その質問コーナーの間、人事がすぐ横でずっとやりとりを聞いていて、ああ醜いなって思った。こんなことを思うのはダメなことくらい知ってる。許して欲しい。思ってしまいました。


帰り道あまりにもやるせなくて、中之島付近でカレーのお店に入った。

とても美味しかった。まあまあ安いくせに本格的。今なら分かるんだけど、そうだよね、就活中は並んででも美味しいもの食べたいよね。

そんなことを思いながらカウンターでオムカレーを食べた。僕から少し離れたところで女性が一人カツカレーを食べていた。

少し元気になったから、好きな音楽を聞きながら中之島公園をずっと歩いた。


公園はいい。みんな楽しそうだ。おじいさんは難しそうな顔をしながら芝生で本を読んでいるし、お父さんは幸せそうに娘とキャッチボールをしている。よく分からんどこぞの大学生は提灯を持ってヘラヘラ踊っているし、気持ち悪い衣装を着飾って無意味な撮影をしている人もいる。

公園で散歩している老夫婦は特にいい。とても幸せそう。

そんなことをしていたら、去年の5月にここに来て女の子とぎこちなく歩いてはわざとらしく振舞った挙句、帰り道に告白して沈没した出来事を思い出した。あの日も快晴で、僕は少し汗をかいていた。

なんだかひどく感傷的な気持ちになって、僕は写真を撮った場所をわざわざ訪れたりした。下見までして見つけた夜ご飯のお店は、遠くから見るだけ見て近くに行くのはやめた。


それから京阪電車に乗って、サークルのライブに向かった。

車内で寝そうだったから、寝過ごさないように本を読んだ。その本の中で狼狽えるほど的確な喩えがあって少し落ち込んだ。世の中には天才が多すぎる。

読書に疲れて視線をあげたらそこは中書島という駅で、遥か昔の4月に母親と定期券を買いに来た日のことを思い出した。

春は何でもかんでも思い出すし、気分は虚ろになる。本当に嫌だ。


会場へ向かう途中、何も練習していないのに一体僕は何をしに行くんだろうか   

とか

でもてきとうに弦をを鳴らせば音は出るし、まあいいか

とか思った。


4年も経とうとしているのに未だに人前でアコギを弾くのも歌うのも苦手で、手が震えて客も見れない。緊張してしまう。

エレキギターならそんなことならないのに。音がデカくて、エフェクターでごまかせるからだろうなぁ。

やっぱり演奏は今日もひどかった。

演奏後、誰からも声をかけられなかったりすると少し落ち込む。そんな自意識にも嫌になる。

でも思い思いに歌うと少しすっきりした。


もちろん髪型もいじられた。

髪を切ったら人には会いたくないものだ。

分かってはいたけど、やっぱり前髪がないのは似合わない。


少し疲れててあまり人と話す気になれなかった。

気を遣ってテンションを上げることもできなかった。ちゃんと夜は寝ないとダメだ。

こんな日は人に会わない方がいいんだろうなぁ。

みんな明るく楽しそうにしてて場違いな気がした。気を遣わせていたらどうしようなんて心配をした。

スーツの人が二人いて、頑張れと思う一方、私服の僕は本当にダメだなとかなんとか思った。

面接にはできる限り進みたい。明後日初めての面接だなんて少し恥ずかしい。でも進めてくれた企業には心から感謝できる。


ライブ後の後輩からの二次会の誘いを何回か断ってすぐに帰った。

申し訳なかった。来て欲しそうにしてくれていたから嬉しかったけど、そのぶんだけ申し訳なくなった。

楽しくやってねなんて先輩らしく言ってみたけど、それはなんだか割と本心から言ってる気がして落ち着いた。


帰りに同じ最寄駅の後輩と別れる時、彼女が寂しそうにずっとこっちを見ながら立ているものだから、なんだか僕も寂しくなってきて道を戻って声をかけてあげたかったけど、そんなことをしたらダメだと思ってまっすぐそのまま歩いた。

でもなんだかなぁなんて思ったから少し振り返って、

変な子だなぁってわざとらしく大きな笑い声をあげて帰った。

しばらく歩いたらまた道を戻って、少し遠いコンビニへ歩いてタバコを一本吸った。

その後はそのまま家に帰ってすぐ寝た。

明日はwebテストを朝早くに受ける。早く寝よう。


やっぱりベッドは気持ちよかった。

夢を見たいと思ったけど、やっぱり今日も見ないんだろうなぁと思った。

横になってみると、なんだかんだ今日は人に会って良かった気がした。


2.18.2017


2月18日。天気は晴れ。少し煙たい感じの空、太陽。

ドアを開ける。少し暖かったからコートを置いてくる。僕はよく服装を間違える。実際にやってみないと分からないのと同じで、実際に外に出てみないと気温が分からない。


今日は蛍池まで行く。久しぶりの阪急宝塚線

ゴミみたいな(アウシュビッツ収容所のような)中高時代の通い慣れた道。ほんとにクソ。

今でもそう。クソはクソ。何も変わらない。

同期の連中の中にはまだ高校の先生に会っているやつらがいる。そうやって、それはそれで良き時代として認識することでなんとかやってるんだろうなぁ。

そうだとしたら彼らは幸福だ。間違いなく。

間違ってるとか間違ってないとかそういう次元の話じゃなくて、幸福かどうか、そういう話な気がする。

その保ち方が不健康だと言われたらそれまでだけど、不健康な保ち方でもきちんと自分が保護できるのであれば僕はその方がいいと思う。

さて、それで問題の僕はというと、言うまでもなく不幸です。


労働について考える。

僕は就職を第一には考えていない。就職こそがゴールなわけがない。僕には僕の人生がある。

社会に出るとは?労働とは?

僕はそこで僕だけの価値を見出したい。

こんなものがあること。こんな人がいること。素敵な考え。素敵なダメ人間。

時代の潮流。時代の考え。そんなのに合わせなくてもいい。

でも残念ながら僕は何も持ち合わせていない。見たら分かる。落ちてばっかりのES。

ため息が出る。

たまに通ったりすると大喜び。バカみたい。


僕は思うのだけど、僕はやりたいことがはっきりしてるのだと思う。

僕が思うに所属は、そこに所属するあらゆるものの価値を上げる気がする。

こんな酷な話はないけれど、確かにそういう気がする。

名も知らない個人が発信する言葉よりも、誰もが知っている有名な企業からの言葉の方が重くとられると思う。

そりゃ個人個人を見ていけばそう捉えていない人もいるのだろうけど、大方の人はきっとそうだ。

悲しいけれど、きっとそう。

実力がある個人はわざわざこんなことをしなくてもいいのだけど、僕にはそんなものがあるとは到底思えないから、やっぱり僕は大きな企業に行きたい。

ある企業の人が言ってたけど、読まれていない記事はなかったに等しい、だって。

そんなことはないのだけど、どうだろう。現実ではそうなんだろうなぁ。

いい言葉はどんなことがあってもどこかで評価されると信じているのだけど、というよりも信じていたいのだけど、君は理想主義的であまりにも幼稚だねと言われるのが筋なんだろうか? 世知辛い


あと、アドバイスをくれた先輩に先日ESが通ったことを伝えたいと思ったけれど、惑った挙句やめた。

一生懸命悩んでくれて(と勝手に思ってる)、なんとか意見を捻り出そうとしてくれたのに、如何せん就職の話はリアルすぎた。また就職の話をするのはあまりにかわいそうだ。最後の学生生活なのに。

本当に申し訳なく思っている。難しい中よく相手をしてくれたなぁと感謝する。

最終的には、最後の方に連絡したもの、それは形式自由の自己PRで半ば自暴自棄に小説を書いたものなんだけど、それが通ってしまった。

それを提出する前、その小説読ませてって言われたのだけど、

それ、通るやつなんでちょっとコンプライアンス的に難しいですね

ってつまらないジョークをかまして見事大滑り。てきとうに断った。まぁとてもじゃないけど恥ずかしくて見せられない。オモテ面にはありえないほどマーカーと赤ボールペンを使ってたし。

彼女にそれが通ったことを報告したら、笑いながらなんじゃそりゃ、なんて言ってくれるかなって思ったんだけど。それがほんとに笑ってるかはまた別問題で。きっと無表情で 笑 なんて打ってるんだろ。

きっとあれは疲れてる。遊びすぎ。休まなすぎ。あちこち飛びすぎ。

きちんと自分の体力を考えてください。倒れないでください。(といってもこれ読んでないでしょう?ほんとにもう。)

そんな優しい?(とりあえず疑問符を打っておきたい)先輩になんとか通ったことを報告したかったのだけど、まあいいや。どうせ面接でボロクソにやられる。次は5分の面接があるらしい。

まぁやる事って言ったら僕は大きな声で、

僕はこういう人間でこれがやりたいと思ってるのだけど、もしここに合ってないと思われるならどうぞ落としてくださいと言うだけの話ですね。

それで落ちたらそれはもう仕方がないよ。合わないものを合うようにしても嘘がバレるだけだし。そんな器用じゃないのも知ってる。

でも結局僕は社会をなめてるんだろうな。

心底そこで働きたいなんて思ってもないところがなめてる。

僕は価値ある人間で、僕にしか言えないことがきちんとありますってタカをくくってるんだろうな。

バカみたい。ダサい。


そんな疑いから、ちょっと前に某メーカーの懇親会に出席した。

なんだかお偉いさんが数人来て話し始めた。

仕事はまあつまらないし、かなりくだらないです。でも仕事は仕事として存在しているだけで、それを面白いと思うどうかはあなたが決めることです。そしてそれは綺麗な花が最初から存在せず、花を見て綺麗だと思うあなたがいるのと同じです。ってな話だった。

言葉って不思議。いくらでも綺麗に言えちゃうんだ。きっと。それこそが言葉の力ですか?

通勤ラッシュでたくさんの人たちが駅に並んでいる写真を見せられて僕はただ気が狂いそうになったのだけど、彼らが乗り込む電車には何人もの野望が共に乗っているそうだ。

おじさんおばさんは、それを見ている若者に社会の歯車が無表情に運ばれていると思われるのは悲しいらしい。そりゃそうだ。

確かにそれはそれで僕は立派な説明だと思ったけれど、僕にはやりたいことを放り出して別の野望を抱けるほど器用な人間じゃないから、なんだか困ったものだなと思った。

でもまぁ働いている人たちは嫌味なく立派だと思う。

そうやって与えられた場所、与えられた機会ごとに目的を自分で見出して、そこに向かって長年努力ができる。僕も本当はそうなりたかった。


音楽。小説。

均一化する現状が気持ち悪い。

同じものの繰り返しは飽きたよ。

前一列の思想。

これもまた気持ちが悪い。そこからはみ出したら、凡人には生きる道がないのか?


少し、1日。気軽に会える人と気軽に遊びたい。

少し笑って、飯食べて、そのまま帰る。

なんて素敵な1日だ。できる限り気楽に話して、気楽に話を聞きたい。

会いたい人に会いたいって素直に言える。

それって、とても素敵なんじゃなかろうか。

でも少しダサいかもしれない。でもしてみたい。


今日伊丹空港で後輩が一人、一年間の旅に飛び立っていった。

何人かの仲間でそれを見送ったのだけど、僕はどんな顔をしたらいいのか分からなかった。

周りのみんなが泣き出した時、僕は必死に思い出をかき集めて泣くことを試みた。その時僕は自身を乖離して、泣こうと努める僕を黙って見ていた。

なんでだろう。なんで馴染まなければならないのだろう。

苦手だ。

もしかしたら僕は情が浅いのではないのか、とか余計なことを思ってしまう。

悲しい。

唇をかみしめてただ彼女を見ていた。

別の人だったら、僕は泣けたのだろうか。分からない。でもきちんと悲しい。それだけは分かる。

ただ泣かなかった現実の結果だけ見たら、僕は間違いなく薄情だ。


散髪をした。髪が少なくなった。寂しくなった。就活ヘア真っ只中。いっそ坊主にすればよかった。悲しくなった。フードを被った。

また落ち込んでしまった。前までの髪の長さにパーマ当てたらいい感じになるよって美容師さんに言われた。バンドマンヘア、なれるかな。

就活、少し疲れた。自分の人生。でもそれは果たして僕の人生だったのか?

僕は全てを背負わなければならない。それを自分で選んだか選んでないかに関わらず。選ばざるをえなかったかそうでなかったかに関わらず。

そんなことを考えた。そしてそれは間違いなく虚しい。


誰かに何かを言って、誰かと同じ場所を一緒に歩いて、申し訳ないことをしたなんて思いたくない。

申し訳ないなんて二度と思いたくない。


ちょっとした雑事をてきとうに毎日上げていくので、めんどくさいと思います。ごめんなさい。気持ち悪かったら言ってください。

自己顕示欲というか、見せる形を望む心がめちゃくちゃ気持ち悪い。一番。どうにかしないといけない。ダサい。


飢餓

 

「わたし、大型トラックが運転したいのよ。すごく綺麗なの。キラキラ光ってとっても大きいんだよ。あそこの荷台を部屋にして、間接照明に囲まれて暮らしたいの。」

ある時期付き合っていた彼女があまりに大真面目な顔をしてこんなことを言うものだから、僕は彼女に大型トラックをプレゼントした。

僕はその時運転免許なんて持っていなかったけれど、頑張って車の買い方を知人に聞いて回り、それを彼女にプレゼントした。

彼女はとても喜んでくれた。その笑顔たるや、どんな優れた画家も忠実には描けないだろう。もちろん僕も、それをうまく言い表せる表現を知らない。それさえ知っていれば、僕は彼女を見失わずに済んだのだ。

僕は何も知らない。

彼女は東京出身だった。どう考えても、大型トラックが東京の街をプライベートで走り回れるわけがない。

数年後僕が上京して、そのトラックがたまたま通りかかった中古車を取り扱うお店にあった時、僕は胸が冷えて収縮した感じがした。

いや、事実きちんと冷えて収縮した。多分何年分かは本当に寿命が縮んだと思う。

しかし車内のどこを探しても、彼女が大好きだったキャラクターの人形は見当たらなかった。だから僕は今でも、あれは彼女のものではなかったと思っている。

僕は隈なくそれを覗いたのだ。店員に注意されようと、僕は構わずそれを覗いた。

この僕が言うのだから間違いない。

車のナンバーは1109だった。

 

僕はふと、自分がロックミュージシャンにならなければならない人間なのではないかと感じた時があった。

だから僕はその使命を忘れぬよう、その日のうちにコンビニへ走ってタバコをワンカートン買いに行った。

その時の僕はタバコの買い方なんて全くわからなかったので、店員にてきとうな番号を言ってワンカートンを持って来てもらった。

今でも僕は思う。どんな日もタバコはまずい。

 

でもいいことだってある。 

 

僕の二番目の彼女は、僕と同じキャスターマイルドを吸っていた。

あれは寒い冬の朝だった。僕は缶コーヒーを片手に、イヤホンから流れる暴力的な音楽に倣って街のコンビニでタバコをふかしていた。

すると彼女は僕の肩を叩き、僕にイヤホンを取る間も与えず言った。

「すみません...。ライターを貸していただけないでしょうか?」

それから僕と彼女はすっかり意気投合して、キャスターマイルドについて5分は話したと思う。

キャスターマイルドは本当にマイルドであること。実はそんなに匂いがスイートではないこと。ウインストンの今後の未来と戦略、JTの悪口。

 

「税金払ってるんだから、喫煙所の一つや二つ作りなさいよ。」

僕は彼女のこのセリフに痺れて、彼女に好奇心を持った。

どこにでもあるような、なんならテレビの受け売りにさえ聞こえるセリフである。

こんなセリフを、タバコを吸いながら自慢げに話す彼女が僕はとても愛おしく思えた。

でも僕はそれ以来彼女に会っていない。

ではなぜそんな人を彼女と呼ぶのか、それはみなさんの気になるところでもあると思う。

事実僕もそこのところはとても気になっている。

でも今こうして文章を書いていて思ったのは、その発言に僕が尋常じゃないほど彼女を愛おしく思わせる何かがあったこと。そして僕がタバコを吸う本物のロッカーであったこと。この二つに尽きると思う。

 

 

小説を書きたいとは思うけれど、僕には全くもって小説が書けるとは思えない。

だって僕は、小学生の時にファーブル昆虫記の一ページ目から自分がどの段落を読んでいるのかを見失うようなやつだったから。

僕は全く小説を読んでこなかった。

僕は幼少の頃、親が嬉しそうに買ってくれるという理由だけで本を大量に買ってもらっていたのだが、大体の本は読んでもいないのに勝手に読んだ体にして、父親の講釈に知ったような顔で頷くだけの少年だった。

僕は小説の技法で言うところのメタファーが大好きだったが、肝心のそれが一体何を意味しているのかなんて全くわからなかった。

ただ文脈から外れたおとぎ話を、コントのように読んでケラケラ笑っている中学時代だった。

大学なんてもっと最低なもので、僕が「頑なに」を「がんなに」と読んだ日には  ーー  それが何番目の彼女かは忘れたけれど ーー  彼女は僕に大きく、それはそれはとても大きく微笑んでくれたものだ。

そして今、僕の文章を読んで彼女は言うだろう。

「それは微笑みじゃないのよ。」

さあ、また微笑んでくれ。

 

僕には悲しいことが自分の周りに多いだけなのか、それとも世界の巷に溢れているありふれたモノなのか、よく分からない。

だから僕はせいぜい知ったふりをして、人生なんて悲しみの本質そのものだよ、なんて講釈を垂らすことしかできない。 

でもそれにしたって周りの人間が異様に輝かしく見えてしまう日なんかは、僕はもしかしたらこの世界において人間としての数に入っていないんじゃないかと思うようにしている。60億人に1人や2人異星人が混じっていようと、この世界にはなんの影響もないのだ。きっと。

 

僕は自分の分析上、何かが酷く欠落してしまった人間のように見受けられる。

それは多分5番目の彼女も同じことを言うだろう。

ほぼ全ての人たちが、僕のもとを僕に大層辟易して去っていった。彼女たちはもちろん僕に何も話さなかった。何一つ言わず、何の文句も言わず、さよならの言葉を交わす間もなく、僕にほとほと愛想尽かしてこの世界から出ていった。

彼女たちが少しでも僕に何かを語りかけて行ってくれていたら、僕は僕なりに回避の余地があったと思う。

けれど彼女たちに何かを言わす時間を持たせないほどまでに僕は、彼女たちの善意を踏みにじってきたのだろう。そしてそれに気づかないところこそ、僕みたいな異星人は異星人としての証を持つのだ。

 

 

1109。

それは僕が大学時代の7年間を暮らした部屋の番号だ。僕はよくそこでメソメソ泣き、ゲラゲラ笑い、隣人によく嫌がらせをされた。

それは決まって僕の部屋の右隣のやつによる犯行だった。左隣のやつはもはや息をしているのか怪しいくらい静かだった。そして僕は思ったのだ。

なるほど、世の中の大半は右で構成されているのだから、勿論一番厄介なのは「右」の概念なのだ、と。

だから僕はある時から「右」を極度に嫌うようになり、あえて「左」の概念を持つよう努めた。

言わずもがな箸は左手で持ったし、ドアを開ける時は左手でドアノブをつかんだ。ウインクする時は左目をつむったし、エスカレーターは有無を言わさず左側に沿って並んだ。僕はあらゆる「左」を実行した先駆者的存在なのだ。

しかしそんなことも2年間したらやめてしまった。ご飯はたくさんこぼれるし、ドアを開けるのに1分はかかった。ウインクは気持ち悪がられるし、エスカレーターはみんなどこに立っていても文句を言ってきた。

要するに世界は、僕が如何様に努力しようと全く何の変化ももたらさなかったのだ。

そのようにして僕はその7年間を、あらゆるめでたい死体たちと暮らした。大学生活なんて得てしてそんなものだ。誰もがきっと、「右利き」である自分を嘆いたに違いない。

 

しかし不思議なことがあるものだ。 

僕はある日から家を追い出された身だった。

別にその大学へは実家から通えたのだけど、両親があまりにも僕を拒むものだから、僕は途方に暮れながら、あの部屋のベッドの隅でジッと座ってただ時が過ぎるのを待っていた。まるで死刑執行を待つ囚人のように。

そして僕は思う。

多分囚人も隅っこが好きだ。あそこはあらゆるものを受け入れるためにできた穴なのだから。彼らを待つ場所はあそこにしかないのだ。

そこに場がある限り隅っこは存在し続け、そこに世界がある限り異星人は異星人として存在し続ける。

なんて素敵な世界だ。これだけは創造主である神を褒め称えるしかない。

 

はじめの春は、本当にあの1109号室が嫌いで仕方がなかった。僕は涙さえ流した。あまりに僕がメソメソ泣くものだから、ささやかな励ましとして僕の部屋にはよく毛虫が来てくれた。

でも仕方がなかったのだ。僕にはそこしか居場所がなかったのだから。

僕はある時から、こんなところに僕が追いやられたのは全て自分が悪いのだと思いこむことにした。僕には何かひどい重大な欠陥があって、そのせいで両親は僕のことが嫌いになってしまったのだ、と。

そうすれば僕は両親を嫌わずに済んだ。両親の愛情を変わらず信じることができた。

 

あの部屋は、本当に日差しが強かった。だから僕は、心から太陽を憎んだ。あんなものがなければ僕はこんなことにはなっていなかったのだと思った。太陽が辺りを明るく照らすから悪いのだ。

どうすれば太陽を消すことができるのか、僕はよく思案した。

 

当時は周りにある家具全てが僕に襲いかかってくる気がしたし、僕はここにいるべきじゃないと心から思った。

しかし僕が実家に帰りたいと懇願すればするほど、両親は僕を強く咎めた。だから僕は、両親に懇願したことを謝った。だって全ては僕が悪いのだ。何かをお願いする権利が、この僕にはあったのだろうか。

しかし僕は自分が何に対して謝っているのか、皆目見当がつかなかった。

 

 

僕がこの不条理な世界に産まれてから2489番目に話した女の子は、僕が見てきたあらゆる女性の中で一番美しい女の子だった。というよりも、僕が生涯出会うであろう女の子の中で一番美しい女性だった。僕は今でもそう強く断言できる。

僕は彼女に強く憧れ、彼女になりたいと心から思った。 彼女の中を駆け巡る思考の果てを考え、彼女のあの強い眼差しに映る汚れた世界を深く思った。

僕には彼女の全てがあまりに綺麗で、とても輝かしいものに見えた。

でも僕にはどうすることもできなかった

だって僕は異星人なのだ。あらゆる下賤な勲章を、あの忌まわしき1109号室に隠したスパイなのだ。

だから僕は、彼女から逃げ出すことばかりを考えた。

彼女に嫌われ、彼女を心からうんざりさせたい。

僕はそんなことをあの怠惰な春に、心地いい夏に、寂しい秋に、諦めの冬に思った。

いつものように何も知らぬまま居なくなってしまうくらいなら、事の全てをきちんと理解し、僕の方から進んで彼女にさよならを言いたかった。

でもそんなことは到底無理な話だった。だって僕は、そんな彼女といつまでも仲良くいたかったのだから。

 

人間はより遠くの惑星を求め宇宙船を飛ばし続けてきたが、この僕は、どこまでも果てしなく欠けてしまったあの無償の愛を求め続けるだろう。それがきっと、僕が異星人として与えられた使命なのだ。

僕は思う。

これから出会う女性は全て彼女をベースに見てしまうだろう。

全ての女性は、彼女からの引き算によって成り立つのだ。

 

 

2月。

冬はまだ終わらないことを確信しながら、でも僕はたしかにそこに春の息吹きを感じた。

それは昼間に漂う光の匂いから。外で騒ぐ子供たちの声から。少し遠くにある赤いレターボックスの渦の中から。

太陽の光は相変わらず鬱陶しく僕の部屋を、つまりは僕の心を、焼き尽くした。

 

 

僕が太陽が陽気さを纏った、しかし一方でその陽気さに憧れるアンバランスな存在だと気づいたのは、大学4年目の夏だった。

 

世の中には才能と呼ばれるものがある。

それは確かに特別なものだが、しかし時として人を破壊してしまう。

人は、才能を持つだけでは何も成し遂げられない。それをうまく手名付ける能力が必要なのだ。

ある者がその才能を利用して生きていこうとするには、その才能を自分自身で強く自覚し、どのようにしてそれを使っていくかを思案せねばならない。

それはある種で驕りの意味合いを持ち合わせ、我々は社会に生きるかけがえのない人類の一員として、人を貶して生きていく覚悟を持たねばならなかった。

あるいは、才能に対する巨大な見返りを求めるあまり、濁流に飲まれ死んで行く覚悟を持たねばならなかった。才能ある彼らの一部は、もうそれが十分であることを心から理解できない。

そして彼女は、恐らくそれを知っていた。自分の中の内なる才覚も、それを持つことで伴う危険についても。

彼女は”残念ながら”、才能を持つあらゆる者の中であまりに優しく、頭が良かった。そのために彼女は、社会との関わりの中で上手に生きていくことができなかった。

彼女もある意味では、才能と引き換えに、それに怯えながら生きる運命を背負わされた悲しき異星人だったのかもしれない。でも勿論それは僕なんかとはまるっきり違う。彼女は異星人になることを自ら望んだのだ。

 

彼女は言った。

「私はただ口笛を吹いていたの。でも褒められてしまったから。仕方ないのよ、頑張らないと。だってそこには私しかいないんだから。」

 

彼女と話している最中、僕はよく思ったものだ。

もし僕が彼女だったら、もっとうまくそれを手名付けられただろう。

そして僕は彼女のことをもっと知りたくなる。

だって僕は、優しくなかったから。

 

 

人類には ーー それは勿論我々異星人にとっても ーー 大事なものを失くす苦しみがある。

大切なものは、僕らの人生にとって永遠に地続きではないから。何かをとても愛おしく思うのは、その終わりを知っているからだ。

そしてこれは、僕が男に、あなたが女に産まれたことによる悲しき副産物である。

ある者はこれによって祝福されるだろう。

こんにちはマリア。産まれてきてくれてありがとう。

しかし僕は違う。僕はとても苦悩する。自分が異星人であることを強く悔やむ。タイに飛んで、あらゆる世界の秩序を壊したいと思う。

それでも僕は求め続ける。週に数回の慰めの後、僕は自分が男であることを悲しく思う。

そこで僕はやっと、変われない自分を知る。

全てを口にできたらどれだけ楽だろう。何食わぬ顔で言ってみたいのだ。平気なふりをして、気が向くままに、強く、言ってみたいのだ。

 

僕は暗い話が聞きたい。そしたら僕はとても満足するだろう。これこそが彼女のためなのだと。僕は彼女の素敵な人生の、ごく僅かな、ほんのささやかな、微笑ましい一部になれたのだと。

馬鹿げている。夢物語を聞かせてくれるのは、この地球において母親以外誰一人として存在しない。僕は産まれる場所を間違えてしまったのだ。

愛の探求。世界の果てに到達。

「なんなのよ。一体何がしたいの?」

そして僕は繰り返す。いつもと同じように、僕の知らぬ間に彼女は誘拐されている。愛想と言う名の悪魔によって、彼女は遠くカリフォルニアへと連れ去られている。

僕はひっそりと涙する。1109号室。

さらば愛しき友よ。

 

 

3010号室の扉を開ける。

そこに彼女は立っている。髪の毛は少し濡れている。

彼は靴を脱ぐ。すると目の前から、あのなんとも言えない懐かしい匂いが漂ってくる。あの部屋の、あの匂いが、あの頃と何も変わらず漂ってくる。

廊下を少し歩くと、ムッとした暑さが彼を覆う。これも昔と何一つ変わっていない。でも彼はそれを気にも留めない。黙って扇風機の風量を強めにする。

テレビがついている。くだらないバラエティー。アイスティーが置かれた机の下には勿論、既に飲み終えたペットボトルが何週間にも渡って捨てられている。

喉が渇いた彼は、立ち上がって冷蔵庫を開ける。そこには色んなものが乱雑に積み上げられていて、それを見ていると彼は自分が欲しかったものが段々分からなくなってくる。そしてその僅かな隙間から、冷蔵庫用消臭剤を発見する。彼はなんだかおかしくなって、大きな声で笑ってしまう。

すると彼女が向こうから急いで走ってくる。開けるなと言っただろうと彼を叱る。彼は訳もなく謝っている。僕はその遥か遠くから、彼に左目でウインクを返す。

なんて幸せな日常なんだ。なんてありふれた幸せなんだ。

軒下には桜が咲いている。

 

僕は、彼らが僕の同胞であることを強く願う。

彼らが誇り高き異星人として、いつまでも変わらず、強く生き続けることを心から願う。

きっとそれだけが、僕の涙を乾かしてくれる。暖かくて優しい。いつまでも暖かな、優しい太陽。

ありがとう。

もうそんな素振りなんて必要のない、幸せな日常。

 

 

 


きのこ帝国 - 風化する教室

 

 

天才

 

梅田の街でストリートミュージシャンは歌う

どこかで聞いたJ-POP

そこに群がる女子高生

巨大なバスターミナルがお出迎え

誰もお前なんて必要としてねぇよ

 

くだらない文章書き連ね

わけのわからん象徴と暮らす日々

揺れる電車は苦い思い出と虚ろな目

とんでもなくお似合いよ

慣れない夜は天井見つめて

俺は天才だった

どこの角で間違えた?

誰もお前なんて必要としてねぇよ

 

働き蜂には甘い蜜を

何かを思う心に果てしない自由を

街を歩く多くの目が俺を睨んでる

何も言うな

誰もお前なんて必要としてねぇよ

 

空き缶漁るために腰が曲がっちまったんだね

涙にふけて年老いちまったかい

今日も文章はダメ

うつむくお前が痛々しい

とんだゴミでごめんよ

温かな風呂も、優しい料理も

夜になると誰かに会いたくなるのかい?

 

足早に去って行く人並み避けて

通風口から酒の匂い

君の悲しみは売れたかい?

誰かが喜べばそれが社会なのだと

信じることはタダなんだから

なぁ、俺って天才だよな

”I don't like me any more”

あんたバカね

いつも同じ口調

 

誰かを動かしたい

誰かを救いたい

救ってくれよ、俺たち全部

なあ、そうだろ

嘘じゃないだろう?

 

うるせえ

誰もお前なんて必要としてねぇよ

 

 

 


Steven Wilson - Thank You (Originally from Alanis Morissette) 

 

 

フィクションは河合隼雄のくしゃみがする

 

背の高いすすきが生い茂るあの丘の上に、ヤツは立っている。

陽の光を浴びて、少し背を丸めて、眼下に広がる綺麗な海でも見ているのだろうか。

風の中を歩いている。

無関心を装うこと。それは酷く難しいがなんとも生きやすい。

俺は嫌になった。

ああ。

「それを言われてお母さんはどうすればいいの?」

 

そして今、俺はあそこに行ってヤツをぶん殴ろうと思う。

俺がヤツに与えることができる暴力のすべてを行おうと思う。

壊してやるのだ。お前がそうしてきたように。

壊してやるのだ。どうしようもないくらい。

壊したくて壊したくて仕方がない。狂おしいほどに壊したい。

足りないんだ、何もかも。全て足りない。なんで足りないんだ。

 

みんなは海が見たいと言う。

海は綺麗で素晴らしいからだと声を揃えて言う。でも俺には分からない。

ぶん殴る。気持ちが加速してくる。もっと壊してやりたい。

暖かい素敵な場所でごはんを食べよう。だって俺たちは心からそれを望んでいる。

俺はその日、駅のホームで自分が帰るべき場所に向かうための正しい電車に乗り込んだ。

そしてそいつの頭を鉈で打ちぬく。額に汗が流れ出す。止めないとまずい。俺は知っているんだ。

「もう嘘はやめなきゃ。なんでそんなことをするの?」

蹴りあげる。

「なるほど。サンタクロース君はロックスターなんてとんだパチもんだってことが言いたいのか。

そりゃ俺もなれるものならロックスターよりトナカイになりたかったさ。

でも生憎生まれつきの弱視なんだ。あんまりモノがよく見えない。」

白く透明な肌。そこを流れる血はあまりに紅く美しい。

優しい気持ちで生きていたい。心から優しく。永遠に優しい気持ちのまま。

 

風の中を何も言わずに歩いて行くお前は悲しすぎる。

俺はもう何をしても現状が変わることはないことを知っている。

でももう戻れない。心が何かを必死に求めている。

再び拳を上げる。血しぶきが顔にかかる。ナイフで喉を裂く。

立ち上がるな。何か言ってくれ。

沸き起こる衝動で、自分の体ごと粉々に粉砕したい。

再びそいつの口元を殴る。

その時、ひどく鈍い音がした。

俺は嗚咽を上げながら崩れ落ちてしまう。

謝ってくれよ。どうして俺をこんな気持ちにさせるんだ。

目の前で小さな声がする。何かが違う。

また殴る。

後悔させないでくれ。

俺は一体どうしたら満たされるのだ。

 

俺はクソだ。

そこら中に落ちている破片を必死にかき集め、そいつを元通りにしようとする。なんとか戻してやりたいと強く思う。何がそんなに憎く、自分が何をしたいのか分からなくなってしまった。

俺はダメになる。

どんどんダメになっていく。

自信がなくなっていく。

俺はずっと強く何かを信じていたかった。

謝る声が聞こえてくる。そいつはずっと謝っている。

違う。俺が求めていたのはこんなのじゃない。何も解決していない。俺を殺してくれ。

結局のところ誰になにをされても俺が満たされることはないようだ。

 

海が見下ろせるあの丘の上で、ヤツは背を丸めて手を振っている。

俺からはその後ろ姿しか見えないのだが。

海は何も語ることはない。それは人ではないのだ。

だけど少しでいいから何かをヤツに語ってやってくれないか。

俺が望むものではない特別なやつ。

そしてしばらくして海は消え、ヤツは手を振るのをやめた。

「優しいいい子なんだから。自信を持って。」

 

どこかに行けばきっと何かあるはずだ。

俺は声をあげて泣きたくなった。

 

 


Sufjan Stevens, "Blue Bucket Of Gold" (Official Audio)