パネル描きの男の人
君は日本語がうまく話せなかった。
いや、といよりもそうだな...。もっと正確に言おう。
そもそも君は、言語が意味を成すための法則にしっかり則ってそれをきちんと相手に提示することができなかったし、そういった法則の下で人から与えられた言語を確実に理解することができなかった。
要するに君は、言語が扱えない人だった。
君はアメリカでもフランスでも、勿論ここ日本でも、誰とも会話をすることができなかった。言葉を持たないということは、つまり君はひとりぼっちだった。
でも君は人と通じ合うことを望んだ。
人は人と通じ合うことでしか自己を確認することができない。みんな誰かを望んでいる。そしてみんな誰かに求められたいと思っている。そうじゃないと私たちはここにいることさえも確認できない。それは勿論君も同じだ。
そりゃ一部では君も孤独を望んだかも知れないけれど、それだって結局は繋がりを望む枠組みの中で生まれた孤独であって、最早それも繋がりのシステムの中でしか成り立たなかった孤独だ。
体制派の中で生まれた反体制派という枠組みが、結局はそれだって彼らが対抗した体制派の一部でしかなく、あまりにも脆い結果で終わったのと同じ理屈だ。連合赤軍も革マル派も、もうここには存在しないのだ。彼らもきっと、この世界のどこかで、この体制下のどこかしらで、汗水垂らして懸命に生きている。
そんなわけで、君はパネルに絵を描くことにした。絵を描くことでなんとか人と通じ合おうとした。君は君ができる最大の力を持ってこの世界と交じり合おうとした。
たしかに君に誰かの言葉がはっきりとした意味を持って響くことはなかったけれど、君は世界やそこにいる人々を君の中でしか成り立たない君独自の言語を以って観察し、それらを懸命にパネルに描いた。そうすることで世界と共存しようとした。
しかし大半の人間はそんな君をバカにした。
「なんなんだ、君は。なんで何も話せないんだ。声は出ていても意味がわからんよ。うめき声をあげるんじゃないよ。耳障りだ。」
そういうわけで、君は世界から”ただの無能な男”と呼ばれることになった。
そしてそれと同時に、君は”ただの無能な男”としてこの世界に存在することになった。
そんな光景に対して、君がこの悲しみを彼らに表現できる手段は皆無だった。だから君は”ただの無能な男”として、懸命にパネルに絵を描いた。
それしか君にはできなかったのだ。
しかしパネルに絵をたくさん描いていく内に、君は段々嫌気がさしてきた。
パネルの絵なんて誰も見ていないことに気づいてしまったのだ。
これはとても残念なことだ。一人の、世界に順応しようとした罪なき人が、まさに今世界の圧倒的な力に屈しようとしているのだ。誰がヘレンケラーを殺せるだろうか。誰がナチスを許せるだろうか。
「一体誰が、異常なこの世界を正常なまま捉えることができるだろうか。」
そういうわけで、それからの君は”パネル描きの男”として存在することになった。
圧倒的な絵を描くことで、君は誰もがその絵に振り向いてくれることに気づいたのだ。
どんな権力者も、どんな美人も、君のその圧倒的な絵を前にするとすぐそちらに目を向けた。どんなに近くで身の毛がよだつような爆風が聞こえてきても、どんなイカした男がその通りを颯爽と通り過ぎても、君の絵の前では誰もがそれらに見向きもせず君の絵に見惚れていた。
すると、次第に君の中で世界がちっぽけなものに感じられてきた。この世界がてんで取るに足りないものに見えてきた。結局は皆、圧倒的なものの前にはひれ伏すことしかできないのだ。
だから君は、より過激なものをより力強く肯定的に描き切ることで、みんなに自分の絵を見てもらおうとした。つまりは自分の存在を知ってもらおうとした。
君はそう。”パネル描きの男”だ。
より過激で、より極端に、より力強く物事を肯定する。
それが君にとっての”パネル描きの男”たる所以だった。
しかしそれと相まって、君の世界は日に日にちっぽけになっていった。
テレビの取材は家の前を覆い、どこへ外出するにもカメラがあちこちで光った。みんなが笑顔で君に近づき、とても親しげに話しかけてきた。
勿論それに対して君は今まで通りうめき声しかあげられなかったが、みんなそれをありがたそうに聞いてにこやかにしていた。
”こいつらはバカだ。”
君はそう思ったと思う。
”何を言っても結局は何も変わらないんだ。誰も何も気にしちゃいない。何を言おうが世界は変わらないし、何を言わなくても世界は一緒なんだ。どれにしたって、結局圧倒的な力の前では何もかも捻り潰されるだけなんだ。”
”〜社会なんて取るに足りない〜”
なぁ、”パネル描きの男”。君は最後まで孤独なつもりでいるのかい?
君はある晩、その力を以ってある人と寝た。
君にとってはそれがはじめての時で、そのせいで君はとても緊張していた。横にはその人の頭があって、その人の香りがあって、その人の呼吸があって、その人のそのままがあった。
その人は生き、そう、正に今、君のすぐ隣で、その人はそのままの形で生きていた。綺麗な言語を話し、綺麗な笑顔をし、綺麗な呼吸をした。
すると君は分からなくなってきた。段々と、次第に、そして遂に、君はひどく取り乱した。何かが違う、、!
君はパネルを探した。どうにかしなければならなかった。分からなかった。何かを表現せねばならなかった。これを留めておかないわけにはいかなかった。考えなければならなかった。生きていくのだ。言葉だ。言葉だ。言葉だ。
でも君にはパネルしかなかった。仕方がない。これは仕方がないのだ。だから勿論君はパネルを探した。
するとすぐ横でその人は笑った。確かに、はっきりと、その人は笑った。
「何よ。大丈夫。何もないの。私もあなたも、ここには何もないの。安心して。元々ここには何もないの。みんな、元々何もできないのよ。」
それでも君はパネルを探した。君にはそれくらいしかできなかったから。
できること。できないこと。やりたかったこと。やりたくなかったこと。自分の理想。自分だけの理想。諦めきれなかった価値。どうしても諦めきれなかったもの。
そういうわけで君は”パネル描きの男の人”になった。
それも”素敵なパネル描きの男の人”だ。
そしてそれと同時に”一人の素敵なパネル描きの男の人”として世界に存在することになった。
「一体誰が、異常なこの世界を正常なまま捉えることができるだろうか。」
分からない。
でも君にはパネルが描ける。それもとっても素敵なパネルだ。架空の女の子が、たとえそれがほんのささやかなものだとしても、一人でも振り向いてくれる、そんな素敵なパネル。
そんなものが実在するかどうか、ましてや本当に女の子が振り向いてくれるかどうかなんてさして問題じゃない。
何人もの人が振り向くものではないけれど、それはそれは君はとても立派な”パネル描きの男の人”だ。
誰も君を”素敵なパネル描きの男の人”とは呼ばないけれど、もうこの世で君をそんな名前で呼ぶ人はいないけれど、それでも君には立派なパネルが描けるじゃないか。
言葉も話せない。だけど君は世界を知ろうとする。
言葉がうまく話せない。だけど君はこの世界でよく生きようとする。
それでいいじゃないか。
一体君は明日は何を描くのだろう。
仕方ない。仕方ないのさ。仕方がない。仕方がないのさ。
Sufjan Stevens, "Blue Bucket Of Gold" (Official Audio)
麦とホップ
「また逃げるの?」
「そういうつもりじゃないんだ。ただ、今は・・」
「そうさ。努力は無駄さ。よく分かったろう?」
「そうやって気取って。生きていく為にあなたは一体どうするつもりなの?」
「違うんだ、ただ・・」
「やった!やったぞ!」
「やったじゃないか!パーティーをしよう!それはそれは華やかなやつをね!今日はとびっきりいい日にしよう!」
「社会のシステムが・・」
「もうあなたのそういう自己防衛の仕方は見飽きたわ。だからあなたはダメなの。まるで話にならないわ。」
「パーティーだ!みんなありがとう!」
「またそこにすがるつもり?」
「やめろよ、そういうの。誰もお前の味方なんかしないぜ。」
「みんな必死なんだ。お前もいい加減ちゃんとしろよ。」
「違うんだ、違う・・ただ・・。」
「ダメなんだ。君はダメだ。まるでダメだ。いいかい?君はダメだ。」
「ダメだ。間違っている。君は間違いだ。」
「自己否定による承認欲求の高さが・・」
「違うんだ・・、」
「君はダメだ。」
「終わりだ。何も聞くまい。帰ってくれ。」
ダメだ。その覚悟は十分にできている。
「社会は間違っている。暴力による主張も辞さない。」
「でも人を殺したくはないんだ。」
「システムから溢れた人達の受け皿がない。革命だ。革命が必要なんだ。」
「あなたはどこを見ているの?ここにいること。それだけが正解なのよ。」
「違うんだ、聞いてくれ。」
「君はダメだ。まるでダメだ。」
「どうするつもり?」
「僕はただ・・」
「そういう理想論、いい加減聞き飽きたわ。あなたは生きることがどういうことなのかまるで分かってない。みんなしんどい思いをしながらそれなりに生きているの。」
「諦めろ。無理なことは無理なんだ。みんなしんどいんだ。」
「周りを見てみろよ。」
「違う・・・、」
「餓鬼じゃないんだ。」
「いい年した大人がよ。」
遠すぎる。
「またそうやってあなたは自己愛にまみれた文章を書くのね。」
誰かが言う。
そうさ。僕にはこれくらいしかできないのだから。
「分かる。言いたい事は分かる。誰だってそうなの。」
「でもね、皆はあなたみたいにそれを追い求め続けはしないわ。」
「食べなさい。そして寝なさい。そうすればきっと少しはマシになるわ。」
「僕はここに一切の人称代名詞を出さないような文章を書きたかったんだ。主語さえない、そういう世界をね。そうすれば何もかもがうまくいくと思った。」
「でも君にはそれができるほどの技術がない。」
「その通り。だから僕はどこへも行けない。」
「だけど君はそれがしたい。」
「うん。僕はそれがしたい。僕は文章を通して自己治癒がしたい。そしてそれを通じて人と対話がしたいと思っているんだ。僕はあまりにも多くのものを避けすぎた。」
「じゃあそれをするために早くビールをやめることね。ビールは君を壊すわ。早かれ遅かれ、君は壊れてしまう。」
「君に会う為には、ビールをやめたら会えるのかな?」
「ええ。ビールをやめたら会ってあげる。君にはまだ終わって欲しくないの。」
だから僕はビールをやめたい。
帰り道に見たスーツとその匂いで悲しくなった僕は、弾けないギターを一生懸命弾いた。
そしてまたビールを飲んだ。
会えないかもしれないけれど、僕にはこれしかできないのだ。
誰もが嫌いなたばこを吸った。これは社会不適合者の証だ。
「言ったわよ。あなたはそこに行くべきではなかった。」
これから僕はどこへ行こう。
夕焼け空は言わずもがな綺麗だった。
僕は今間違いなく酔っぱらっていた。
誰にも会いたくなかった。
「だったら文章なんて書かなかったらいいじゃない。」
誰もがその通りを通り過ぎて、それを僕は黙って見ていた。勿論ビールを飲みながら。
社会、社会はあまりにも遠い。
僕はこれからどこへ行こう。
MUSE | Aftermath | Español | HD ver. Album
暗い話はしたくない
最近はまあ悩むこともなく、かといって悩むことがないわけでもなく、よく分からない日々を過ごしています。
掴めそうで掴めなくて、だけど別に掴むものも特段近くにあるわけでもない。
僕はつくづくこの世界がよく分からなくなります。
最近本を読んで、その本は悪とは何か、みたいなことが書いてある本だったんですけど、悪を完全に排除することはまた別の悪を生む、みたいな、これまたどっちつかずのよく分からない本でした。
つまり何が言いたいかって、完全なる何かなんてここには存在してないってことです。
その矛盾に窮することこそ生きていく辛さだけど、だからこそ生きることにある種の充実感が伴うのかなぁと、将来が全く見えない僕は思うわけです。
だってそう思わないと生きていけないでしょう?
わけわかんないけど、まぁいいかって思うことも時には大事なのかなと思います。
こっちから見たら悪に見えるけど、別の角度からみたらそれは完全に正義だってやつがこの世には間違いなくあって 〜それは例えば宗教がいい例ですが〜 、だからこそ僕が思うことも正解ではないのですね。同様に社会で正しいこともそれが正義ではないんです。
だから一般的に正しいとされていることも社会では間違いであることがあって、「それじゃおかしいだろう」なんてことを言っていたら社会では生きていけないなんてことが往々にしてあるんじゃないかと、就活をしていて僕は思います。
そしてそれを変えることは難しい。
絶対的な正義なんてこの世にはないからです。
社会は、というか組織は、間違っていることも大いに包含していなければ組織として成り立たなくなってしまうことがあるのかもしれません。
そしたら死んでしまったら楽なのかと思うけれど、周りにいる人を見ればそうは決して思えない。
自分と仲良くしてくれる人もいるし、こんな自分に価値を見出してくれる人もきちんといる。
そしてそういう人たちも僕と同様にこの世界にきちんと生きていて、この世界で悩みながらきちんと生活している。
そんなことを思えば僕は簡単に死ぬわけにはいかないなぁと思うわけです。
そういう人たちがいてくれるからこそ僕は生きていけるわけです。
だから僕はそのコミュニティを広げるべく、出会い系サイトに登録しました。
書きたいことは以上となります。
社会はやっぱりクソだけど、出会い系サイトはもっとクソです。
社会は思ったより素晴らしい。
この抒情に
強くなりたい。
そんなことは誰にだって言えた。
でもそこから発せられたそれは違った。どこがどう他と違うのか、今ここに明確な言葉を持たないことを僕は悔やむけれど、でもそれは明らかに他のものとは違った響きがした。それは切実な、ある種祈りに似た、どこかへ向けた強いメッセージだった。
「強くなりたいねん。強く生きていくねん。」
違和感のある関西弁が、その祈りの意味を大きくこだまさせた。
午前5時。
あと少しもすれば誰かが起きるだろう。網戸の音が聞こえてきて、暖かい布団に温められたその足が、この地面を確実に踏みしめるだろう。僕たちを待っている日が、そこにはきちんとあるのだ。
5月ももう終わりだった。窓の外は明るく、小鳥のさえずりが僕にははっきりと聞こえた。太陽はもう昇っていた。外の匂いはすっかり春のよそおいを消していた。
僕はひとりぼっちだった。
たばこを吸いに外に出た。いつも着けているイヤフォンは家に置いてきた。
静かだった。僕は少しだけ安心した。
空は晴れていた。鳥が空を大きく舞った。何もない朝の静けさが、僕に色々なことを考えさせた。
「動物は異常者には近づかないんだよ。ほら。尻尾を振ってる。異常な空気って動物も分かるんだよ。よしよし、いい子いい子。」
あれはいつだったけ。僕が遠いところにいることを自覚したのはいつからだっけ。
見るものも特になかった僕は、タバコの煙の行き先をただ見守った。気がつくとタバコが短くなっていた。捨てられないゴミだけが増えていった。
「タバコはやめるんだよ。」
それを言ってくれたのは誰だっけ。
大きく書かれた診断名に、当時の僕はどう思ったのだろう。
「.........生きづらいとは思いますが、自分の特徴をきちんと理解して、それに対処する術さえ身につけられればすごく楽に生きられるようになると思います。みんなとは違った物の受け取り方や物の見方をしてしまうだけですから。情動の制......社会に馴染めるような価値観を.......。そうですね、はい。あと過集中に関........ご家族や学校の方にもそういった特徴を理解し.....」
母親が泣いている。僕は申し訳なく思う。そんな僕たちを誰かが優しく諭す。
僕にはきちんと空が青く見える。晴れていたら勿論気持ちがいい。自分も、そして好きな人たちにも、みんな一様に幸せになってほしい。僕も同じく願っているのに。
空は本当は青色なんかじゃなかったのか。
僕は遠い。だからこそ、その響きに憧れる。
強く生きていこう。
午前6時。
遠くで電車の音がする。電車にはきちんと目的地がある。電車は毎日そこへ向かって走っていく。僕にも明確な目的地があればいいと思う。
朝が始まる。もうすっかり街は起きている。
多くの足が地面を鳴らしている。誰かはあくびをする。そしてやがてパンをくわえて走り出す。
僕はベッドにいる。青い空が僕を見下ろしている。小鳥が鳴いている。
寝れない夜は寝つく朝に変わっていく。色んな人がいて、色んな日々がある。
でもみんな幸せになりたいと願っている。だからこそ悩みがある。だから願う。だから変わりたいと思う。
「強く生きていくねん。」
僕はその響きに、そのアオサに、焦がれている。
お互い楽しい毎日を過ごしていこう。
家と社会、そして御社
3.15.2017
3月15日、天気は雨のち晴れ。とても寒い。風が荒れ狂い、僕は昨晩の睡眠薬に酔っていた。
日記。
忘れないうちに早く書いて、早く寝よう。気分がいいこと。そして感謝。
勿論最初はくだらないこと。
朝早くから学内の会社説明会へ。
いつもと変わらない圧倒的無を感じる2時間を存分に堪能した。
説明会後はサークルのライブに顔を出した。
みんな楽しそうにライブをしていて、後輩たちが誰かと楽しそうに話しているのを遠目に、僕はみんな一生懸命生きているのだなとしみじみ感じた。
僕にも確かにああいう時代があった。
ある後輩が、僕が随分前にやった曲を演奏してくれた。少し泣きそうになった。
その曲を好きになってわざわざカバーしてくれたこと。
それを歌ってた当時の僕に感動してくれたこと。
僕はそれを聴きながら、当時仲良くしてくれていた人のことを思った。その時の楽しい生活を思い、その時に感じたいろいろな事を思った。
朝ごはんのパン。あんぱんが嫌いなんでしたっけ?
御所の夜明け。
一緒に歩いた四条烏丸から五条までの道。
マンションのエントランス。
部屋の匂い。
真っ暗な部屋の中で浮かぶスマホの灯り。
そこで弾いたおんぼろのギター。
寝返り。
カーテンから差す朝日。
寝返り。
鳴り止まないスヌーズ。
できるのなら止まらないで欲しかった。
あの頃は楽しかった。心から楽になれた。
なんでもないこと全て。
できるのならもう一度あそこに戻りたい。
早く帰りたい。
世の中は理不尽だ。悲しいほどに理不尽だ。
どうしようもない。
全くもって理不尽だ。なんでこんなにおかしいのだろう。どうにかしてほしい。
少し幸せで、眠れなくなる。
僕にも楽しかったことがちゃんとある。
今はなくても、あの時は幸せだった。何もなくても、ちゃんと幸せだったんだなぁ。
早く寝よう。ちょっとだけ気持ちがいい。
ちゃんと楽しかったことがありましたよ。
よかったです。大学に入って。
本当によかったです。
3.13.2017
3月。何日かは忘れた。理由は何日にも渡って日記を書いていたから。
少し疲れ気味。天気は晴れ。
風が強くてとても寒かった。目の下のクマが日に日に酷くなるのと同じように、昼に感じる春の兆しがどんどん酷くなってきた。
本当に嫌になる。
知らん間に眠っちゃって
嫌なとこ着いちゃって
新宿はどっちだった?って聞いたら
甲州街道だよ、って。
そんな感じで僕もいい感じの企業に入りたいのだけど。
でもそれが本当の気持ちであるかは分からない。
本当の気持ち。
我が親愛なるSuiseiNoboAzが新曲を発表した。
歌詞が本当に切なくて、何回もリピートして聴いている。
愛する人の為に 毎日汗をかいて働こう
生きていこう 幸せになろう
have a nice day,Babylon 東京
いつかまた新宿に来ることがあったら
泥臭い川べりでビールを飲もう
いつかliquid rainbowがやってきて
俺たちみんなを助けてくれる
今までの作品を俯瞰してみると、なんとも哀愁のある歌詞だ。
今までがあるからとてつもなく染みる。
最近色んな人に会って話していると、自分だけがズレている感覚を覚えてしまいなんとも虚しい。
自分一人どんどん気持ちが高揚してきて、それに伴って頭も興奮し、だんだん話がおかしくなってくる。
話すテンポがおかしいし、気づいたら自分が一体何を話しているのか分からなくなってくる。酷い時は言葉の語法も気にせず、ただ誤った日本語をひたすら乱射する茶番と化している。
喋っているうちに薄々自分が泥沼に溺れていってる感覚は伝わってくるのだけど、もう自分ではどうすることもできないところまで浸かってしまっている。
やっぱり僕は何かおかしいのかもしれない。
もっと上手にやりたいのだけど、やり方がよくわからない。
せめて自分だけでもいいから、この違和感を感じないようになりたい。
じゃあ何も喋らず、普通に落ち着いてそこにいたらいいんじゃない?
そうじゃない?
なんで僕は普通にその場にいれないのだろう。
喫煙所でタバコを吸っていると、どこを見ていたらいいのかが分からなくなるのと同じように。
電車に乗って車窓を見ていると、多くの人間の目がそこに存在していることが怖くなるのと同じように。
ただ普通にその場にいたらいいんじゃない?
そうじゃない?
どんなに自分が惨めに思えても無為に続いていく人生は、あらゆる惨めな物事の代表だよなぁ。
どれだけ惨めでも友達はそこにいるし、どんなに惨めでもそこに家族はいる。どんなに惨めな生活でも、それ自身は永遠に続いていく。
いくらみっともなくても泣いちゃダメなんだぜ?
そりゃそんな姿、最もみっともないからね。
でも本当にそうなのだろうか?
元を返せばみっともなさ過ぎるが故に泣きそうなのに。
Mors principium est.
Death is the just beginingという意味のフィンランド語らしいのだけど、たしかに死は本当の意味での救済になりうるかもしれない。
先週はよくわからない企業の説明会に二つ行った。
そこで僕はずっとお姉さんの大きく膨らんだ胸を見ていた。なんであんなに目立つような服を着たのだろう。説明が全く入ってこない。
お姉さんはとてもスラッとした美しい体型だったが、なぜか顔や目は丸っこくて、丸メガネがよく似合っていた。だからなのか体型に似つかない可愛らしさがあって、僕はそれに心揺さぶられた。なんでだろう?元々は太っていたのだろうか?
鼻はちょっと丸くつぶれていて、髪の毛をくくる時に余ったアホ毛がおでこの所々からはねているのもよかった。
彼女はよく自己実現、成長と言っていったけれど、痩せるための自己実現、おっぱいの成長。
この二点を鑑みればとても筋の通った言い分だ。
帰りにネットでその企業の評判を調べてみたが、最高にイカした書き込みが多く見られた。
世知辛い。
この世の中、あんな綺麗な女の人のおっぱい一つさえ信じられないのか?
そういえば随分前の学内説明会で、これまたスラっとした可愛らしい女性が細くて綺麗な声で一生懸命不動産の説明をしてくれた。その声があまりに綺麗だったから、僕は鉄琴の音を想起した。
彼女のTシャツの端から見える鎖骨はとても綺麗で、それも相まって彼女は僕にとても清楚な印象を与えた。
そんな綺麗な人が説明の合間にサッとお茶をラッパ飲みし始めたものだから、僕は興味もないのにすぐその会社にエントリーを出してしまった。
今では少し後悔している。
一方、別日に行ったもう一社の人事は27くらいの兄ちゃんで、変な笑顔と変な唇で嘘くさい営業の素晴らしさを説いていた。
そんな彼との三時間で僕は清々しいくらい綺麗に失禁した。
やっぱり男の人事は鼻から信用ならない。
僕は”エントリーをしない”の項目に丸をつけ、理由の欄に胡散臭いと書いておいた。
性格が日に日に悪くなっていることを自覚する。
本当に嫌になる。
鏡に写る自分は髪が短いし、目が死んでいる。髪が短いことはさして問題ではないのかもしれないけれど、一メタラーとしてこれはとても異常なことだと感じる。
まるで徴兵されに行く人みたいじゃないか。
説明会で熱心にうなづく人を僕はどう見ればいいのか分からない。酷く胸がざわつく。
自分の両親の顔がちらつく時、目に涙が溜まってしまう時もある。
しかしあれこそが生きていくことなのだ。
生きていく。生きていかなければならない。
でもそれにしたって僕はやっぱりあの空気感が嫌だ。
相変わらずだよ 好きなようにやってる
ガタガタガタガタ言われるけどね
あの頃のことを覚えているか?
今気温はどんどん上昇していく
通りにいろんな食い物の匂いや 夏草の匂いが戻ってくる
何万キロも走ってきた後の お前はまるで消しゴムのカスのよう
liquid rainbowがやってきて 俺たちみんなを助けてくれる
liquid rainbowがやってきて 俺たちみんなを助けてくれる
花は枯れ 風が止まり
恋人たちが消えた後に
liquid rainbowがやってきて 俺たちみんなを助けてくれる
愛する人に捧げるために 毎日汗をかいて働こう
生きていこう
幸せになろう
have a nice day,Babylon 東京
いつか新宿に来ることがあったら
泥臭い川べりでビールを飲もう
いつかliquid rainbowがやってきて
俺たちみんなを助けてくれる
そうだよ。
できれば変わらず好きで居続けたい。