道
俺は流れゆく車窓を見ている。
何かいいアイデアが浮かんだら、それはきちんとメモしておかなければならない。
水に浮かぶ泡のように、それは恐ろしい速さで水の集合に溶けていく。
俺だけじゃない。きっとエジソンだってそうだったはずだ。
いや、そうであれ。
俺には願うことしかできない。
でもそれはバカだからじゃない。
理由?
くだらない。
やつはもう死んだんだ。
知らなかった。
街の街路樹は無意味だ。街の街灯も等しく無意味だ。
街の建物も無意味だったから、街を行きかう人もまた平等に無意味だ。
幸せなもんさ。みんな等しく無意味なんだから。
おかげさまで特段何も気に留めずに済むよ。
この世のすべては、俺が見ているこの車窓をただ流れていくだけのものだ。
たとえ窓際に差し込むまぶしすぎる太陽に目を瞑ることはあっても。
.............太陽。
逃げ惑う俺にまとわりつく光。
そのために俺は電車に乗ったはずなのに。
憧れ。
そんなもんさっさと捨てて楽になれよ。
死にてえのか?
その先で俺は夜になる。
たとえその夜が同じ無意味だとしても。俺は夜になる。
「陽はまた昇る。」
まるで慰めになんかなりはしないよ。
捨てられるだけの人生なんて勘弁さ。
諦めるだけが人生じゃないはずだ。
もっと違う人生を。もっと違う心を。
楽になる方法がきっとあるはずさ。
真夜中に道を歩けば彼が教えてくれる。
ただそこで呼吸しているだけで世界は素晴らしい。
誰もいない街。安楽はそこにある。
人に認められ、受け入れられていくことだけがすべてじゃないはずさ。
生きていくこと。それはもっと自由なはずだ。
流れていく景色は自由だ。
汚れた目も自由だ。
愛することは自由だ。
だから。嫌われることもまた等しく自由だ。
抗うことは自由だ。
だからこそ投げ出すことも同じ自由だ。
無意味であることさえも、全く同じ自由なはずだ。
人に認可なんてされてたまるか。俺だけの今日だ。
走り続けるのさ。
死んでみたらわかるぜ。
それは無意味なんかじゃない。
価値がなくなるのさ。
勝手に白旗をあげるのだ。
1人電車に乗るのだ。
叫べなくたっていいのだ。
窓際の少年。
イヤフォンの音量を全開にして音漏れしているその声もまた同じことさ。
まったくもって無意味だ。
悲しいくらいに無意味だ。
無意味すぎる。
誰も聞いちゃいない。
だけど俺はそれを知っている。
俺だけがそれを知っている。
ロックンロールを愛している。