名前をつけてください

なにもないよ

mom is the symbol of having been a mere facade

 

はい、お母さん。

元気?

お母さんの腰痛、少しはマシになった?相変わらずポニーは不機嫌?

俺はまあまあ元気。

最近は就活が忙しくてなかなか文章が書けない日々です。ちょっと辛いです。でも書ける時間を見つけては書いて、また不定期でぽつぽつ送りますね。読んでくれていたらうれしいです。

 

今日は天気がよかったね。俺はパンを買って、公園のベンチで音楽を聴きながら食べたよ。ほうじ茶のクリームパンにクイニーアマン、それと午後の紅茶ストレート無糖。音楽はLeonard CohenのYou want it darker。最近出たアルバムだよ。絶対好きじゃないと思うけど。

Leonard Cohenはね、めちゃくちゃ低い声で唄を歌うんだ。声を張り上げることがないんだよ。ぼそぼそ呟くような感じで終始唄を歌う。でもついこないだ死んじゃったよ。アルバムを発表してから数週間後だね。アルバムを出したときのインタビューで「もう既に私は死ぬ準備ができている」なんて言ったもんだから、メディアも大騒ぎ。びっくりすることにLeonard CohenはBob Dylanと仲がよくて、そのBob Dylanのノーベル章授与式の直後に亡くなったんだ。原因はわかってないみたい。

不思議なものだね。みんなはきっと自殺だと思ってる。やかましいよほんと。

あ、興味ないよね。ごめん。

 

 

こうやって文章を書いていると、あっという間に時間だけが過ぎてしまいますね。ふと時計を見るとその間に書いた文章だけが残っていて、だけど俺はそれだけの量を書いた実感がまったくないんです。多分推測するに、その時の俺は悪魔か何かに憑りつかれているんだと思います。

 

でもね、お母さん。俺ね、たまに人からうらやましいって言われるんだよ。こうやって思っていることを言葉にできること。

でもこんなものを書きたいと思う生活って危ういものだと思わない?

うまく生きていけないことをわざわざ人に見せたいと思うなんて、どこか人間が破綻していると思わない?

だってお母さんも困るでしょ?もう振り回されるのはごめんだよね。

俺が最近の日々の生活の中で実感することは、自分自身が幼いころから何も変わらず、周りとは恐ろしいほど距離のあるところで生活しているということです。

なんでこんなに他の人が愛されているのか、俺には分かりません。なんで自分がこんな風になってしまったのかもわかりません。誰に何を話せばいいのかも、何を話したいのかも、そして究極は、誰がどこにいるのかもわかりません。

お母さん、なんで俺はこんな人間になってしまったのでしょうか。どうすれば変われたのでしょうか。俺はみんなになるために、わりと一生懸命考えて生きてきたつもりだったのに。

ダメだったなあ。俺は憑りつかれているのかもしれません。

 

今まで会ってきた人たちの思い出も、何もかもが名前と顔だけで終わってしまいます。俺は生きてきたのでしょうか。もしそうなら、なにをして生きてきたのでしょうか。

お母さんの記憶もあんまりありません。言われたら思い出します。でも何もないところからは、その声と顔、名前しか出てきません。

 

でも俺は決して悲観主義者ではありません。お母さんもそう思ってくれていたらうれしいです。

過剰に反応してしまうだけです。それはマイナスのものだけではないのです。人に対する感謝も、好意も、怒りも、あらゆる感情すべてです。つまりこういうことです。

俺はつくづく生きるのが嫌になる。だけど天気がいいとめまいがするほど生きている素晴らしさとその高揚を味わう。

 

あ、そういえば今日は歌を作ったんだよ。弾けもしないピアノと、喋れない英語で。

くだらないでしょ?でもね、本当にくだらないんだよ。6分間もクソみたいな音楽をするんだから。

ただの慰めだよ。

だけど歌を作っているとクソみたいな自分が肯定されたような気持ちになれるんだ。

俺は人間を辞めたい。そうすれば、俺の感情は俺だけのものになれる。俺自身が俺だけのものになれる。

人間でいることは人間としてそこにいなきゃいけない。

こんなこと日本語でなんか歌ってられないよね。

 

受け入れられたい。お母さん、俺はまだ受け入れられたいと思っているよ。

でも嫌いになりたい。早く嫌いになりたいな。

また話してね。そういう曖昧な形のものだって、俺は知ってるよ。あまりにも多くを言葉にする人間がいずれ死ぬことも。 

 

年末に帰るね。それでは。

Dear 

 


Mitski - Class of 2013