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なにもないよ

見なくていいですと言って、それでも必死に何かを書く矛盾を好きになってしまうこと。

雑事

 

大体において面倒くさいと言われる。そしてまあよく勘違いされる。

なんでもオープンに話してしまう。

すぐ人にほいほいついていってしまう。

笑顔を向けられたら笑顔で返してしまう。

なぜ僕は語尾に「してしまう」なんて言葉を使わなければならないのだ。それらはとても純粋で、いいことなんだよって。なんで笑って言ってくれないのだ。

そのあとで僕はまあ当然のごとく捨てられる。

その時はきっとうんざりした顔をされている。

そして僕は悲しんでしまう。安いウイスキーを買って、我慢できず家までの帰り道に飲む。

強度のアルコールにむせること。たばこを震える手で吸うこと。

イヤホンから漏れる不器用な音楽だけが僕と一緒に泣いている。でも彼らと僕とではそれもまた大きな隔たりがあることを僕は知っている。だって僕は馬鹿じゃない。彼らは今僕に愛され、そしてまた世界中の多くのリスナーに愛されている。

一方でこの馬鹿で甘ったれた僕は何者にもなれず、なにもできない。

情けなくてまたたばこを吸う。

ものさしが欲しい。僕は今ものさしを必要としている。人との距離を計るのだ。

けれどそれを胸に当てて、それでも僕は僕を愛せるだろうか。何かを率直に示し、誰かを素直に見つめ、適度な距離を保つ。そんなことがこの僕にできるだろうか。そんな頭が僕にはあるだろうか。ものさしの使い方がわからずにみんなから嫌われたことがあるこの僕が。みんなのものさしの真似をして得たお利口な人間関係に辟易して、ものさしをぶん投げたこの僕が。それなのに僕はまた同じように人に嫌われ、捨てられることを恐れている。その怖さゆえにぶん投げたものさしをもう一度探したいとさえ思っている。けれどそれももう手遅れだ。僕はこの現状の僕が得てきた何かを大事にしている。そしてそんな僕を僕は好きにさえなっている。うまく立ち振る舞う頭なんてハナから持ち合わせてなく、自分を強く持つ心さえない人間がやることじゃなかったのに。もう僕は僕にさえ笑顔を向けている。そしてこの僕はその僕にうんざりした顔をしている。

すぐ何かを諦められる優しい心が欲しい。僕の優しさは優しさなんかじゃない。僕は他人を許容できない。僕には僕の自由があるように、他人には他人の自由がある。僕に言わなくていいことだってあるし、僕を嫌うことだって、僕を突き放すことだって、それは彼らの自由だ。他人についていって、他人に恋い焦がれて、それで何かを僕が彼らに要求することは大きな間違いだ。そしてそれは大きなおごりだ。僕が彼らに与えたものはただの僕の好意によるもので、彼らは何一つ要求などしていない。気持ちの悪い人間だよお前は。つくづく気持ち悪い。

それでも彼らが去っていくのはとてもつらく、とても悲しい。それはこの世界のパズルのピース、どこか一つが抜け落ちてしまったかのような気分になる。好きな小説のどこか大事な数ページが裂けてしまったような。行かないで欲しいと心から思う。ここにいてくれと強く思う。それでも僕にそんなことを抜かす権利はどこにもない。彼らは彼らの自由がある。けれど、それでも、そうだとしても、僕は彼らに強く訴えたい。行かないでくれ、と。でも彼らは当然、見向きもせず走り去っていく。楽しいことがたくさん待っている世界へと一目散に駆けて行く。それは当たり前の話だ。そこが彼らの楽園なのだから。だけど一方で僕は天才なのかもしれない。酔えば何もかもが揺れて、知らぬ間に朝になったり夜になったりする楽園を知っている。もし仮にその両者の違いを挙げるとしたら、そこが僕や彼らを待ち焦がれているかどうか、ただそれだけに尽きる。そしておそらく僕の楽園は、僕のことを待っても拒んでもいない。ただそこに存在しているだけの、無機質な入れ物容器の空間だ。

僕がすごくかっこいい俳優だったら、彼らは去っていかなかったかもしれない。僕といることに何かステータスがあったら、彼らはここにいてくれたかもしれない。そして面倒くさいなあと言って横で笑ってくれたかもしれない。ちょっと前まで横にいたはずなのに。おかしい。こんなにもみんなのことを大事に思っていたのに。

幼稚園、小、中、高と、その頃に言われた酷くつらい言葉を思い出すときがある。でもきっとそれはあながち間違いじゃなかったんだろうとも思う。もしかしたら僕の未来に警鐘を鳴らしていたのかもしれない。しかしその記憶はつらく、そして悲しい。ひどく落ち込んでしまう。でも僕は確かに普通ではない。そこに対するカウンターも、もう今はいい。何をするにも僕は無力だ。そして頭も悪い。

それでも生きていけなんて、くだらないと思う。諦めて生きていくなんて、そんなの死んでいるのと同じじゃないか。僕は生きている以上、抗いたい。自分を肯定し続けたい。それができないのなら死んだほうがいい。

帰り道、むせながらウイスキーを飲むこと。震える手でたばこを吸うこと。一人で自室が奪われてしまった実家に帰ること。下宿先の玄関でくつひもをほどきながら床に涙を落とすこと。変わっていく何かを受け入れようと努力すること。本当のことを話せないこと。烏丸通りを眺めること。

明日はいつも通り嘘をつく。人が大嫌いで、興味もなく、何も思うことなんてない。忘れた。全て忘れた。あいつらのなにがいいんだ? くだらない。本当にくだらない。本当のことを言うなんて本当にくだらない。人が怖くなった。悲しくなった。ただそれだけ。それだけです。

「俺は変なやつだ。本当はこんなところに来ちゃいけないヤツだ。なにしろ周囲から浮きまくっている。そいつは天使みたいに輝いていて、あまりに綺麗で泣けるくらいだった。そんなものを目の前にしても俺には何もない。何か誇れるものが欲しいよ。ケガをするなんて大したことじゃない。ただ自分の気持ちをコントロールしたいだけ。少々のことじゃへこたれない強い人間になりたいよ。特別な人間に釣り合うような、そんな人間に。」

トムヨークでさえこんなことを言う。そんなのあんまりだ。

せめて忘れんなよ。俺は楽しかったんだから。もう忘れたからなにがなんだか分からないけど。悪気はないのに嘘つきと呼ばれ、さよならも言えずに車窓から投げ出される俺からの最後の嘘。俺はこうやってしか生きていけない。これから先は知らない。興味もない。

読まなくていいです。これを文末に書いてしまうこと。それもまったくもってくだらない。