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なにもないよ

お笑い芸人


午前3時にベランダに出て、350ml缶の酒を片手にキャスターに火をつける。

色んな思いが交錯して、俺の目の前に午前3時の夕焼けが迫ってくる。

色んな味がして、色んな匂いがする。

夕焼けを背に、俺の目の前を多くの人が通り過ぎ、そしていなくなる。

よくこんな時間までお前と話してたよな。

あんなに長く何の話をしてたんだっけ?

夜中の3時にキャスターを吸っていると、俺の顔に散らばるそばかすは、まるで夜空を埋め尽くす星のように瞬き、お前があの時ふと言った一言が、朝焼けを反射させて光り輝く露を被った草のように俺の心を煌かせる。


俺は大学からタバコを吸い始めた。

恋人はいつも俺にタバコを吸い始めた理由を尋ねてくるけど、俺は少し困ってしまう。

だって俺は、こんな風に生きてみたいって思う人たちがみんなタバコを吸っていたから吸い始めただけだから。

そんなこと一々説明するなんて、ダサくて仕方ないじゃないか。


俺もお前みたいになってみたかった。

お前と一緒にいつまでも笑っていたかった。何でも全部笑い飛ばしてみたかった。

"俺は悪くない。おかしくもない。おかしいのはお前たちだ。こんなの死んだほうがマシだ"

お前それ本気で言ってるのか?


午前3時に350ml缶を持ってベランダでタバコを吸う。

終わってるなって呟いてみたら、終わってるなとどこかから声が返ってきた。

失意が、誰かのやるせなさから産まれる言葉でどこかに消えていく瞬間の美しさ。

それで救われる綺麗な心。

俺のそばかすはどこまでも光り輝く。

お前の言葉は何かを変えていく。

星になる。星になれ。星になる。

誰かの見えない傷が塞がる瞬間。

空にグレープフルーツほどの馬鹿でかい月がかかる。

美しい。

美しい時間。

自販機ばかりのパーキングエリアで置き去りにされた気分。

それでも笑い合える喜び。

死んだら負けの、クソみたいな人生。

夜は一層夜になっていく。

その先は夜になる。